2008/4/9 (Wed.) 14:42:18

鍋の日以来、親しくなったユージの家に遊びにいった。
なんだか色々むしゃくしゃしてて、酒持参。不良になっちゃったのかなー俺。

『バカ。飲みたいなら俺に言っとけよ。』いきなりユージに怒られる。
バレたら部活とかどうするんだ?ってさ・・。

・・・俺だって・・そんくらいわかってるけど・・。

おぎやんが1000円札を二枚、ぴらんと俺に渡してくる。
『なに?』
『酒代。』
『・・・・・・なんで?』
『この酒は、お前が俺のおやじに買ってきてくれたものだから。はい。』
『・・・・』

・・気を使ってくれる小木矢。優しさにジンとくる。
俺は、『いいよ。土産。手土産だから。おじちゃんにやって。』といって笑った。

おぎやんが酒をおじちゃんに渡して、そしたらおじちゃんが礼だとかいって、ピザとってくれた。
ピザを食いながら、ぽつりぽつりと話す。

『・・こないだ・・また比呂が俺の店にきてさ・・。』
『・・ふふっ・・。比呂が?』
『うん・・。うまい棒をー・・ふふっ・・。買うんだけどさ・・。』
『ああ。ははっ。』
『すげえ細かい嫌がらせすんだよな。』
『どんな?』
『俺んち店。6種類くらいうまい棒置いてあってさ・・。』
『へえー・・。』
『5種類のうまい棒は10本ずつ買ってんのに、テリヤキだけは9本しか買わないの。』
『ははっ。』
『俺は、絶対比呂のことだから、変な作戦立ててんだろうとおもって。』
『うん。』
『見抜いたのね。テリヤキだけ本数違うことを。』
『うん。』
『何で?とかいうんだぜ?バカだろ。そんなの気づくわ。普通に。』
『あはははは。』

『そのあとも、なかなか帰らなくてさー。』
『うん。』
『ユッキーとうまい棒のドラえもんみたいなやつって、誕生日いっしょだぜー!とかいったりさ。』
『9/13?』
『そうみたい。そういうのをさ、そういう無駄知識をさ・・』
『ぷ。』
『ひけらかすために調べてくるんだよね。比呂は。』
『あはははは。』
『根暗というか、なんというか。』
『お前、比呂の相手するの大変だろー。』
『まあな。ごくたまに営業妨害・・。』
『んふふ。ごめんな。』
『いいよ。』

ユッキー以外の口から比呂の話が出ると俺は嬉しくなる。
比呂はなんでかしらないけど、バイト中のユージの邪魔をするのが、
生きがいのようで、とにかくしょーもないことばっかする。

『ユージって、なんで比呂と仲良くなったの?』
『えー・・。まあ、浅井君つながり?』
『ああ。浅井と同じクラスだったっけっか。』
『そう。比呂と浅井って超仲良かったじゃん。
比呂がしょっちゅううちのクラスきててさ。』
『うん。』
『だからといって会話もなく』
『ぶはっ』
『なんか顔は知ってるーみたいな感じのアレだったんだけど。』
『うん。』
『バイトのときに偶然比呂が俺の店にきてさ。』
『うん。』
『あー!おぎやんだ!』
『ははは。』
『俺、おぎやんなんていわれたの初めてなんだけどさ。』
『え?そうなの?』

わーお。初耳。

『そうだよ。比呂の勘違いなんだよ。』
『なんだそれ。』
『浅井が俺を「おぎや」って呼んでるのを、比呂が何気にきいてたみたくて。』
『うん。』
『おぎやんって呼んでるのかと思ったんだって。勝手に自分の心で「ん」をつけて。』
『あははははは。』

ユージは、近くにあったベッドに顔を埋めてふふっと笑う。
『で、比呂バカだから、しばらくした時に
「ねえ、おぎやんって、本名の苗字何?」とかきいてくんの。』
『本名の苗字ってなんだよ!はは!』
『だから俺「おぎや」だよっていったのね。そしたら、すっげー爆笑されて。』
『ははは』
『「うそだら!なにおぎやって。」とかいうんだ。すげえ失礼だろ。』
『・・ばかだなー・・ひろ・・。』
『嘘じゃねえよって何度言っても、「おぎやだからおぎやんって、単純すぎ。
お前最高だな。」とか言って笑うの。』
『ふふっ』
『おぎやんって言い出したのお前だし、勝手に「ん」つけたのもお前だしって
文句言いたくなったけど比呂に説明するのめんどくさいなーと思ったから、
そのままほったらかしにしてる。』
『なるほどねー・・。』
『それ以来の仲良し。』
『そうかー・・。』

ふーん・・。
なんか、心の中がぽわっとあたたまる感じの、気の抜けた話が聞けてうれしかった。
うん。

ユージは、前に比呂に数学の教科書かしたら、落書きして返してきやがったよーとかいって、
それを見せてくれた。すごくささやかな落書きだけど、笑いのツボをこれでもかと言うほど
ぐいぐい押されて、もう降参!

くだらないことばっかしてる俺の知らない場所での比呂。
あーあ・・。恋のビョーキだな。その全てに心がぎゅーっとなるよ。
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