比呂を想う
考えてみたら俺はずっと、比呂のことが大好きだった。
恥をかくのが大嫌いなはずなのに、比呂と会うためならなんだってした。
朝イチ電話してみたり、知らない人だらけのバイト先にいったり・・
他の人らにはそんな事、大したことじゃないかもしれないけど
俺にとってはそんな行動、本当は許される行為じゃないんだ。
『いいやつだ』と思う奴はいっぱいいる。でも『好きだ』と思うのは比呂だけだ。
それに気がつくのが遅かった。俺は今までの自分の行動に軽くひいた。
一晩寝ないで考えて、比呂と距離を置こうと考えた。
頭を冷やさないといけないじゃん。絶対この感情はおかしい。
男同士だから・・っていうんじゃねえよ?そんな小さなことじゃなくてさ
久々の友達関係に、浮かれすぎてるのがやばいってことなんだ。
なにをどう考えようと、俺にとって比呂は特別だ。
ああいう人種との出会いは初めてだし、本当に大好きだなあとおもう。
でもその好きじゃない。絶対違う。他に友として『好き』だと思える奴がいないから・・
だから比呂に対しての好意を・・なんか・・誤ったとらえ方しちゃってるんじゃないかって・・・
いや、そんなの別にどうでもよくって・・
俺が問題にしてるのは、そういう俺の変な態度が、比呂を遠ざけたら困るってことだ。
せっかく仲良くできてるのに、今の俺は変にあいつを意識しちゃうじゃん。
つまんない話とかをして、嫌われたらどうしようっておもうんだ。
俺があいつをどういう意味で好きだとか、今はそんなこと関係ない。
俺、本当に、比呂をろくに見ることもできなくなっちゃってるんだよ・・・。
だから『お前には甘えない』って・・ばかげた宣言しちゃったんだけど・・。
たった数時間で挫折した。比呂がそばにいないのは寂しかった。
で、『甘えない宣言』を撤回しよう慌てて比呂のあとを追ったら、佐伯に先を越されちゃったんだ・・・。
問題を抱えてる時にかぎって、神様は俺の味方になってくれやしない。
裏目に裏目にでてるよなって・・、悲しすぎて俺は泣いてしまった。
ガラっとドアが開いて、佐伯が比呂の肩に手をかけた状態で俺の視界に入ってくる。
すごく楽しそうに笑ってる。だめだ・・。比呂はもう俺んじゃない。
そしたらそんな俺を見て、佐伯がさっさとどこかにいって、比呂が黙って立ち尽くしている。
緊張した。すごく緊張した。あれは比呂なんだけど、今までとは俺の中で絶対的に価値が違う。
名前を・・。名前を呼んだ。思えば今日は、比呂って呼んでなかった。
そしたら比呂が、駆け寄ってきた。『・・・・大丈夫?』
・・・お前のその声が優しすぎるんだよ・・・。
こんな精神状態で、口開いたら何言うかわからない。だけど言わなきゃ・・。
大きく息を吐いて俺は『ごめんな。』とあやまった。言葉と一緒に涙があふれる。
そしたら比呂は、困ったような笑い方で『いいよ、そんなの。』と言う。
それで俺に言うんだよ。『今日はつまんなかったよ。お前と話ができなくて。』
ぎゅーっと胸が締め付けられる。ああ駄目だ。これはもう・・
俺の抱く『好き』は恋以外のなにものでもない。
俺はそれに気づいてしまったことがあまりにショックで、ただただずっと泣いていた。
比呂はね。あの通り、頭のネジの足りないやつだから、そういう俺の変化に気づいてくれない。
機械科職員室までの階段。比呂に背中をさすられながら一段一段のぼる俺は 、ひっくひっくと泣くしかなかった。
・・・・だけど比呂と話ができたことが、単純に嬉しかったし・・ もっと話していたいって思った。
ほんと俺、まじですくえない・・・。どーすればいい・・・。どうすれば・・・。
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