『大喧嘩をした・・』
比呂と大喧嘩をした。
昨日から比呂は俺んち泊まってて、俺は最高に恋愛モードで、 今日は午前中あいつはバイトだったんだけど、
『昼に飯買ってかえるから。』なんていうから、 ときめきまくって待ってたのに、電話がかかってきやがって、
『知り合いの女の人のとこによってから帰る』なんていう。
・・・・は?・・・・・女?なんで?なんでこんな時に?
楽しみにしてた分よけいに俺は頭にきて、『もう来なくていい』って電話をぶちぎって泣いていた。
そしたら30分ぐらいで、比呂が帰ってきてくれて、来てくれればやっぱ嬉しいし、そしたらもっと涙とまらずで
玄関でわんわん泣いてたら、比呂が手をつないでくれて、部屋に上がってベッドに座らせられた。
比呂が俺の顔をじっとみる。あの目で。俺の好きなあの目で。
そして俺に優しい声で『どうしたんだよ。』って聞く。
俺は泣きながら、『ごめんね。』といった。自分が悪いことはわかってたから。
その時、比呂の顔つきが変わった。イラっとした顔をしたんだ。
『それって答えになってないよ。俺はお前が泣いてる理由を聞いてんだけど。』
『そんな・・それは俺の勝手で泣いただけ・・・。』
『・・・理由言えよ。理由を。』
『俺が悪かっただけ、ごめん。』
『謝れなんて言ってない。何で泣いてんの?なあ?言って。』
『・・・・いやだ。』
そしたら比呂が、ブチぎれた。『言え!』 ・・・俺を怒鳴りつける比呂は本当に怖かった。
俺はぼろぼろと泣きながら、がたがたと震えた。
比呂が怒った・・。 あんなに優しい比呂が怒った。 俺もう駄目だ。そう思った。そしたら比呂がため息ついた。
『・・・・何で泣いた?』『・・・。』
『黙ってたってわかんないよ』『・・・。』
『俺はずっとお前に泣かれんの?お前の友達でいたらずっと。』
そういう比呂の声はすごく優しい。うな垂れて泣く俺の頭を、そっと撫でてくれる。
『俺は正直、お前が怖いよ。わけのわかんないことで怒るし、泣かれるし、拗ねられるし。
何が嫌で泣くのかとか・・怒るのかとか・・そういうのがわかんなかったら、俺はお前に何もしてやれないよ。
俺はお前にそうやって、わけもわからず泣かれるのが嫌なんだよ。』
『・・それは・・。』
『・・・何?』
『もう俺なんかの友達やめたいって事?』
『・・・・・そういう極端なことを言うなよ。』
『・・・俺のそういうとこが嫌いなんだろ!!一緒にいるのがうっとおしいんだろ!』
俺もなんだかぶちぎれた。俺だって比呂にいいたいことはある。
『俺はっ・・俺は比呂の一番の友達でいたいんだっ。なのにお前はみんなと仲いい。
女遊びもしまくってるし、八方美人で超むかつく。』
『・・・は?』
『ふざけんな!美味くもないシチュー食って、うまいとか言ってバカじゃん!うそつき!!』
『・・・・・・・』
『うそで褒められてもつらいだけだっ・・結局女のほう優先じゃんか・・。』
『・・・・・・・・・』
『・・・・うっ・・・。』
好きだという感情以外を全部怒鳴り散らしたら、急に体の力が抜けて、さっきとは別の類の涙が出た。
俺がまた泣き出したら、比呂はもらい泣きみたいになって、俺の頭をはたいたけど、
叩いたあとすぐに俺の頭を撫でる。優しい・・。結局こいつは優しい。
『あのさ・・幸村・・・』
『・・・・・・』
『そんなのが・・理由?・・・俺は嘘もついてないし、お前を後回しにしたつもりないよ?』
『・・・・・』
『・・・勝手にそんな風に考えて、それで泣いてたってこと?』
『・・・・・・・。』
・・・・・勝手に考えたわけじゃない・・・理由を作ったのは比呂じゃん・・
そう思って睨もうとしたら、比呂が疲れ果てたように目を閉じた後、顔を上げて俺を見た。
『・・わけもなく泣かれんのはもうやだし、勝手に疑われても困る。
泣かれるたびに理由を考えてきたけど・・全然わかんないことばっかだよ・・。』
『・・・・・・。』
『男が泣くって・・あんま無いことじゃん。お前がイジメにあってたのは知ってる。
だけどもうさ・・今は俺も斉藤も麦もいて・・イジメなんか存在しねえじゃん。
忘れられないつらい事は確かにあるのかもしれないけど、だったらそれを話してよ。
理由もわからず泣かれて俺・・ほんと困る・・・・。』
比呂の目から涙が落ちた。ズキッと胸が痛む。 俺のせいだ・・俺なんかの友達になったせいで・・・。
『もう俺の友達やめなよ。』『・・・・・・』
『お前には友達いっぱいいるし・・俺いなくたって・・。』『そういう極端なことを言うなっていってんだよ俺は。』
『・・・。』
思わず言葉を飲む俺に、比呂は言った。
『お前がそういうことしか言わないから、何一つ解決しないんだろ。』
・・・図星を・・・突かれたと思った・・・・。
『中学の時のイジメが悪いんなら、俺が全部その話を聞くよ。でも最近お前が泣くのはあれだろ?
俺のせいだろ?それぐらいわかるよ。でも自分の何がお前を泣かしてるのかが全然わかんないんだよ。
自分で自分の何が悪いのかわかんないから、こうやってお前に聞いてるのに、八方美人だとか女が優先とか・・
俺はそんな理由でずっとお前に泣かれてたわけ?性格のことで勝手に泣かれて友達やめるとか言われてんの?俺。』
・・耳が痛い・・。
『俺の性格が無理なんだったら友達なんかなれないよ。俺は幸村嫌いじゃないけど、お前は俺の性格が嫌で
何度も何度も泣いてるってことだよ?それってもう嫌いなのと一緒じゃん。』
『嫌いじゃないよっ・・。大好きだよ・・。性格が理由で泣いてるんじゃないよ・・。』
『じゃあ泣いてる理由は結局なんなんだよ。ほんとに俺は心配してんだよ。ちゃんと話してほしいんだよ。
友達やめるとか言われちゃったら、そのあとに言葉が続かないじゃん。 わかって欲しいと思うなら言えよ。
俺だって言いたいことは言う。今のお前は好きじゃない。』
・・・・・俺は比呂の顔を見た。前髪で隠れて目元が見えない。でも頬には涙がぼろぼろと流れてる。
『俺は・・比呂が・・大好きだよ・・・。』そういうので精一杯だった。
そしたら比呂の腹がなった。比呂が自分の腹をさすって、
『・・気が抜けて・・・・腹減った・・。』という。
俺に嫌われてないと知って、少し安心したんだって・・。
バイトで疲れてる比呂は腹ペコらしく、とりあえず昼飯を食うことにした。
そばにあったチラシを見て、ピザをとって二人で無言で食った。
ピザにのってたえびを、何もいわずに俺エリアのピザに乗せてくれる比呂。
食ったら食ったで比呂は黙ってベッドに倒れこんで眠ってしまった。
三時間くらいたったけど・・比呂はまだ起きない。時々くすん・・と泣いたりしてる。夢もどうやら最悪みたい。
比呂が起きたら話をしようと思う・・。あんなふうに感情をぶつけてくれた友人は初めてだ。
恋愛感情とかそういうの以前に・・俺はこの友達をを大事にしたい・・。
怒鳴られてさ・・・怒鳴り散らされたのにさ・・俺は嬉しくてたまらないんだ・・。
あんなに色々言ってしまったのに、まだそばに・・いてくれる。
ちゃんと向き合おうと思う。失いたくない。絶対に。
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