『相談をしてみた』


比呂の背中の傷が気になりすぎて 、小沢に電話したら塾前のコンビニまできてくれるとか言う。
『じゃあ、ちょっとだけ話聞いてもらってもいい?』といったら
『いいよ。じゃあ、すぐいくからね。』って言ってくれて
俺がコンビニで飲み物買ってる間に、小沢がチャリを飛ばしてきてくれたんだ。

『ごめんね。』といいながら、俺は小沢にコーヒーを渡す。
『さんきゅ。きにしないでいいよ。』小沢はそういって塾の前のベンチに座った。

お互い缶コーヒーのプルタブを開けて、ぐいっと一口飲んでため息をつく。
『で、紺野がどうしたの?』小沢に言われて、俺はポツリポツリと話を始めた。

『・・比呂の背中・・・見た?』
『・・・?』
『引っかき傷がついてたんだよ。』
『へえー。ほんと?』
『うん。あれって女につけられたんだろうなって思ってさ・・。』
『ああ・・・。紺野だったら・・それもあるかもね・・。』
『・・・でさ・・、気になっちゃってさ・・・。』
『・・・・。』

沈黙。

『・・比呂に女遊びやめさせたいんだけど・・どうしたらいいかなあ・・。』
『・・・それは・・無理だと思うよ。』

小沢がまじめ顔で言った。
『だって俺ら、男だもん。寄ってくる女とは、やりたいじゃん。
比呂はもともと女好きだし、遊び人だし、たらしだし・・・
そういうキャラの奴にさ・・女遊びをやめろっていえるのはさ・・
たとえ親友でも無理じゃね?・・・権限もってるとしたら恋人とか親ぐらいでしょ。』

・・・やっぱ・・・そうだよね・・。

小沢が俺の肩をたたく。

『片思いはつらいね・・。でもさ、あいつに片思いしてる女なんて 腐るほどいると思うんだよ。
そういう女に比べてさー、ユッキーは普段の比呂を好きなだけ見れるんだからさ。』
『・・・うん。』
『あいつはそれにさ、ユッキーのことをさ、すげえ特別大事にしてるしさ。』
『そんなことないよ。』
『してるよー。こないだも言ったけど、それはほんとだよ?』
『・・・でも・・。』
『必ず声かけるじゃん。何するにもさ。』
『・・ああ・・。』
『体育祭の写真だってさ、殆どお前ら一緒に写ってたしさ。』
『・・・・。』
『・・・。』
『・・・でもさ・・。』
『・・・なに?』
『・・・俺、比呂が他の女と裸でやってるなんて嫌なんだよ。』
『・・・・・。』
『ごめん。すげえ直球でいいすぎた。』

すると小沢が、突然携帯を手にして、誰かに電話をかけ始める。
嫌な予感は的中した。相手が出た途端、小沢がこういった。

『あ、紺野?夜分にごめん。ちょっと今すぐきて。ユッキーんちの塾の前。じゃ。』

ぶつっと携帯を切った小沢は、そのまま電源まで切ってしまった。

『ちょちょ・・・なにしてんの?!』
『考えてみたら本人に聞けばいいんだよ。友達なんだから。』


・・ておおおおおおおーーーーーーいっ!!!


なんてきくんだよ?え?『あんたの背中の傷なんなの?』とでも きけというの?
こんな夜中に急に呼び出して?

ありえないだろー・・ありえないだろ・・・ありえないだろ・・・。
・・・泣きたい・・・。

妙に男らしくベンチに座る小沢の隣で、俺は微妙にオカマ座りになり 紺野の到着を待っていた・・。

15分ほどで比呂到着。

『・・・なんだよもー!!!電源切れてるよ!小沢!』
『わり。充電ギリだったから。』


真顔でホラをふく小沢の隣で、俺は固まる。


『幸村までいるじゃん。なにしてんの?ふたりで。』
『ばったり会ったんだよ。ユッキーとさ。ね。』
『・・う・・うん。』
『ったく暇だなーお前ら。早く帰ってさっさと寝ろよ。』
とか言いながら比呂はベンチに座った。

俺の隣になっ!(ドキー!!)

『・・で、何で呼び出したわけ?』
『ああ。じつはさ・・。』
『(いうないうないうないうな)』
『?』
『お前、最近女と会ってる?とか思ってさ。』
『は?』
『(ぎゃーーーーーっ)』
『・・どうなの?』
『・・や・・。最近は全然。』
『・・・・。』

『まじで?』
『まじだよもー!最近ハルカさんが機嫌悪くてさー!な!ゆっきー。』
『あ・・あ・・・うん。』
『ハルカってあのオカマの人?』
『そうそう。見た?お前シフト表・・。俺の勤務予定、なにあれ?』
『まじで?』
『なになに?どういう意味?』
『俺の暇時間を全部奪おうとしてんの。女と遊んでる暇あったら働けって・・。』
『あれってそういうことだったんだw』
『まじかw』
『今月分の給料、下手したらサラリーマンを抜いちゃうよ!』

突然小沢に呼び出された比呂は、髪が濡れてて風呂上りだってわかった。
俺は、思わず比呂の髪を触る。すると比呂は露骨に驚く。
『なに?』っとみつめられて、俺は心臓発作寸前だった。

『いやね。俺さー。』
小沢が間髪いれずに助け舟を出してくれた。
『最近彼女がほしくてさ。女と遊んでるんなら紹介してほしいなって。』
『・・なんだよー。そんなんなら電話で話しろよー。』
『だから充電切れそうだったから。』
『あー・・そうだったね。』
俺は、どきどきしてる心臓をなだめようとしたが、比呂を意識しすぎてどうにも駄目だ。

すると比呂が、すごく考えた後
『・・俺が知ってる子って遊んでるような子ばっかだからなー。』
という。そして
『小沢やユッキーに紹介できるような人はいないかな。佐伯に聞いたほうがいいよ。』
といって、ベンチから立ち上がった。

小沢もたちあがる。『じゃあ今度、緑の子にきいてみるよ。わりいね。呼び出して。』
比呂はにっこりと笑って、『いいよ。コンビニ来たかったから。』といった。
そして俺を見ると『もう帰るの?』と声をかけてくれる。
すると小沢が気を利かせて『俺、用事あるから帰るね。おやすみ!』といい、
あっという間に俺らの前から去って行った・・・。

さて、どうしたら・・・。

俺が黙っていると、比呂が『じゃ、俺、コンビニ寄って帰るから。』といって、
さっさとコンビニに向かってしまった。 俺はベンチから立ち上がり、比呂の後姿を見ていた。
暗がりから店内に入った比呂が、やっぱり俺にはかっこよく見えて・・・
だから俺もコンビニにはいり、比呂のそばに駆け寄っていった。

『・・・え・・なに?』くると思ってなかったみたいで少しびっくりしてる比呂。
『俺も用事。夜食買おうと思って。』とだけいい、お菓子コーナーに一人移動した。
そして、比呂が何を買うのかさりげなく観察したところ
バンソコとガムとシャーペンの芯を買っていた。

俺は適当なお菓子を手にとって、レジに並んでる比呂の後ろに歩み寄る。
『バンソコ・・・どうすんの?』と決死の思いで比呂に聞いた。すると
『みて。この手。』といい、俺に手を拡げて見せた。
うっわ。傷だらけ。

『なに?どうしたの?』って俺が聞いたら、比呂が教えてくれた。
『昨日でかいサボテン入荷したんだよー。そしたらそのトゲがすごく太くてさ。』
『トゲでやったの?』
『そう。なんか梱包してあったダンボールにまで刺さってて、俺そのトゲで肩とか背中、傷だらけだよ。』
『・・からだじゅう?』
『そう。秋山さんが作業用の軍手で俺を、ぽんぽんって叩いたんだよ。そしたらその軍手にトゲが刺さってて。
浅い傷だから、痛くてさー。今日は今日で手が傷だらけ。』

・・・・・・。

比呂が先にレジを終えて、俺がそのあとに続く。
比呂は俺の支払いすむの待っててくれて、一緒に店を出てチャリにまたがった。

『ねえ。』比呂が声をかけてくる。 『なに?』どきどきしながら俺はこたえる。
『・・彼女、ほしいの?』とかいってくるから、今までの会話の流れ上 『うん。まあね。』といってしまった・・・。

比呂は、ふーんっって顔をして、ちょっとしてから、ははっと笑った。
『小沢一人が盛り上がってるのかと思った。』
『・・え?なんで?!』
『だってお前、女に興味なさそーだもんな!』


比呂はそういうと、自転車をこぎはじめて、 『またあした。おやすみ!』といって、暗闇に消えていってしまった。


どっと疲れが出た俺は、思わずチャリのそばにうずくまる。
そしたらどこかのOLさんに『・・大丈夫?』と声をかけられた。
俺は、スクっとたちあがり、『ありがとうございます。大丈夫です』とこたえると、
恥ずかしくて真っ赤な顔をかくしながら、必死に自転車をこいで帰った。


・・ああ・・。まいった・・・。
何の期待もしてなかったのに、比呂に会えてしまった・・。
しかもしゃべってしまった。
俺はベッドにダイブし、枕に顔をおしつけて、ギャーギャーわめいて
どきどきを収めようとした。

背中の傷は、さぼてんのトゲが原因だった。よかった・・・。

最近の俺は、比呂とすれ違うだけで心臓がとまりそうになるんだ。



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