『比呂のパン』
今日は選択授業で、俺と小沢と比呂が家庭科を選択し 、
三人ぼっちでパンを焼いた。
教えてくれる先生がいないので、本を見ながらの作業だった。
選択授業と言う名の天国・・
最愛の比呂とずっと一緒! 俺の心からの友人である小沢っちまでいてくれる。
しかも俺、比呂と背中合わせだったんだよね。
だから比呂の一言一言にさ、おもいっきりニヤけることができたんだー。
いつもは、隣とか向かい合って話す事が多くてさ、
あいつがキュートなこといっても、顔色変えるわけにいかなくてさ、
一緒にいれるのは嬉しいんだけど、そのへんが割りときつかったんだ。
でも今日はさ、比呂からは俺の表情が見えないわけで
比呂がかわいいこといったりさ、先生とあれこれいってるのをさ、
聞いては露骨に顔に出してさ、目の前の小沢に口の動きだけで
『かわいいよ〜!ちょうかわいいよ〜!』って、言いまくってたよ。
ほんと、比呂最高キュートなんだもんっ!!!
だって大体あれなんだよ。小麦粉はかるときとかさ、
あいつ秤にむかってさ、『待って?・・何グラム?』
とかいうんだもん。秤に対していってるんだよ?
俺らにいってるわけじゃねえんだよ?
その声がさ、すっげえかすれててさ、どうでもいいような言い方でさ
マジで、やばいくらい好きだ!!っておもったよ。
なんか、細かいこと言うとキリないや。 とりあえずパンは、上手に焼けた。
焼きたては俺と比呂と小沢と先生の4人で一個ずつ試食した。
すっげーうめえの。有名店のパンやでも比にならない。 なんだあの、ふわっふわ。
焼きたてのあったかいパンには、幸せが凝縮されている気がした。
で、その後小沢が気使ってくれて、比呂が作ったパンをもらってくれた。
6個のパンが俺の目の前。 食べるのもったいないけど、夜食でいっこ食おうかな・・。
最近俺は、以前ほど、比呂に依存しないようにしている。
だからメールも極力控えて、バイトや学校での話だけで我慢するようにしてる。
心の中であいつへの想いが、どんどん深くなっていくのがわかるから
思わず変なこと口走りそうで怖いんだ。 それに、携帯依存症になりつつあるし・・
比呂にメールとかしちゃうと、返事くるまで何度も何度も携帯見ちゃうんだよね。
ひょっとして夜中に電話があるんじゃね?とか思って、気になって寝れなかったりするから・・。
でも今日はしちゃった。もうなんかもう・・片思い全開すぎて心臓が爆発しそうだったから
ガマンできなくてメールしちゃったんだ。 『今日はパン作り楽しかったな』って。
そしたらすぐにレスがきた。 『楽しかった。メール、久々じゃね?』 ・・胸がぎゅうっとなった。
『そうだね。久々だね。さみしかった?』
『なんかあった?』
『何にもない』
『ふーん。』
『ふーんってなんだよ』
『なんでもねえよ。ただ、久々だなあと思って。』
『ははは。じゃあな。おやすみ。』
『うん。おやすみ。また明日。』
俺はベッドに突っ伏す。閉じた携帯を再びあける。
比呂のメールを何度も読み返す。 読み返すたびに、みぞおちの辺りがじんわり熱い。
ああ・・だめだ。まだ寝れそうにない。下でコーヒーでも淹れてこようかな。
比呂を想いながら比呂の作ったパンを食べて、腹を満たしてぐっすり寝よう。
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