『病院ライフ』

今日も病院。 午前中に部活があって、昼から家の用事があったから 直行組の麦や浅井とは別。
バイト帰りの小沢と待ち合わせして、一緒に病院に向かった。

『あーあ・・。今頃何の話をしてるのかなー』
『あはは。なにしょぼくれてんの?もうすぐ病院つくよ。』
『えー・・でも気になっちゃって・・。』
『ほら、比呂がユッキーを待ってるよ。早くいこう。』
毎度ながら、小さな小沢にでっかく励まされるちっぽけな俺。

病室の前でしばらくためらってたら、ドアが開いて中から比呂が出てきた。

『わあっ・・・・。』
驚く比呂。入学式のファーストコンタクトを思い出す。
『なにしてんの?』と俺が言うと
『あ、・・あの・・入院。』と比呂がこたえる。

よっぽどビックリさせちゃったみたいだ。俺はぎゅっと比呂を抱きしめた。

『おお!ユッキー。家の用事すんだの?』浅井が比呂のベッドに横たわって、 うちわをひらひらとして笑う。
『あれあれ?今度はYOUが入院?』と小沢が言うと、 『ノンノンノン!』っと、浅井がまた笑った。
『ひーくんが、暑いっていうから、添い寝で扇いであげてたのさ。』
『ひーくん?』
『そうそう。おかげでよく寝れた。ありがと、みっくん』

・・・・・・。

いつの間にそんな親密な関係に!!



比呂はどこかに行こうとしてたのに、俺が来たらまた病室に入った。
あれ?麦がいない。来なかったのかなって思ったんだけど、サニマに買い物に行ったんだって。

マイパイプイス化しているイスを定位置に置くと俺は、 『さっき、どこか行こうとしてたの?』と比呂に言う。

『あ・・・!!!』というと比呂は飛び起きる。
『ナースのお姉さんに呼ばれてたんだ。』といって、急いで廊下に飛び出した。

ナースのおねいさん?

それを聞くと浅井がげらげら笑う。
『採血するんだって。病室だと、外野がうるさいから、処置室にこいってさっきナースコールで。』
『外野って?』
『Weだよ、ウィーアー。』
『まじか!どんな印象もってんだ、ナース!』
『妥当な評価だと思うよ、ホワイトナース。』

ガラっとドアがあき、麦が入ってきた。

『おー!やっぱきてたかー。そろそろくると思って、お前らのも買ってきた。』
麦はサニマでカキ氷を、5人分かってきてくれたようだ。
『あれ?夏休み早々補習宣告の紺野どこいった?』
『ナースの国。採血終わったらすぐ戻る。』

俺は、髪がピンクだからと言う理由で、イチゴのカキ氷をもらった。
シャクシャクと氷を崩しながら、メロン味の麦にたずねる。
『補習って何?』
『昨日、雨ちゃんがきてさ、紺野に補習日程のプリント置いてったんだって。』
『あははは。それでね、紺野ちゃんが《恩赦とかはないんですか?》っていったんだけど、
かるーく笑い飛ばされてー、、明日から先生が来るらしいよ。かわいそうに。』
『まじで?・・つか、先生じきじき?』
俺が氷をほおばってたら、隣で無言でカキ氷食ってた小沢がそういう。
たしかに、先生が病院にかよってきて、授業してやるなんて変だよね。 そしたら浅井が爆笑した。
『ナース目当てに決まってんじゃん!!!!』

それからは、ナースだのなんだのと、下ネタ方面で盛り上がった。 でも、比呂が一向に帰ってこない。
そのうち紺野用のカキ氷が、ちょっとずつ溶け始めちゃって仕方ないからみんなで食った。

『紺野ちゃんが、かき氷食いたいっていったから、麦が買いに行ったのにね。』
『しかたねえよ。あいつが戻ってこないのが悪い。』
『『『うん。あいつがわるい。』』』

そんなことをいっていたら、エイトビートで紺野が戻ってきた。
『おかえりー。ながかったね。』というと、
『うん、なんか採血じゃなくって、変な薬を打たれた。』と比呂が言う。
『変な薬ってなに?』
『説明されたんだけど忘れた。』
『大事なことじゃん、忘れんなよ。』
『別に大事じゃなかったから忘れたの!』

俺は比呂の枕元にイス引きずってって移動する。
『ねえ、暑いの?扇いであげようか?』というと、比呂は目を閉じて頷いた。
うちわで扇いでやったら、すっごい気持ちよさそうな顔してる。
『ここ、クーラーつくんだよね。』というと、
『うん。暑かったら温度下げていいよ。』と比呂が言った。

比呂って寝相が悪いから、夜中に布団を蹴っ飛ばしちゃって
クーラーかけたまま寝ると、死ぬほど冷えちゃうんだって。
だから、温度高めに設定しておきなって、ナースの人にいわれてるらしくて
そういう細かいとこまで事情を知れるって、友達特権ってかんじだよね。

比呂は、麦の顔を見る。『あれ?俺のカキ氷は?』
麦は、ばちっとウィンクをする。 『お前が遅いから俺らが責任もって頂きました。』
『えーーーー!!!楽しみにしてたのに!』
『うるせえな、遅かったお前が悪い。』
『カキ氷・・・。はくじょうもの・・。』

そんな意気消沈中の比呂を見て、小沢が言った。 『なら下の売店で買ってきなよ。』

比呂は、財布もってさみしそうに、売店にアイスを買いに行きました。

一人で。(かわいそう)



ちなみにカキ氷の代金は、比呂が出してくれていたらしい。
自分で買ってきたアイスを食いながらぼやく比呂が、最高キュートでまじ困ったよ。

Post at 22:56
NEXT