『いっそ入院しててくれてた方が。』 今日は、比呂が部活に顔を出した。 みんなの輪の中でニコニコしてる比呂がかわいかった。 来週から部活に出るらしく、『心配かけてごめんね。』って挨拶がてら来たんだって。 そのあと、職員室にいっちゃったけど。 そういえば浅井や麦や小沢の家にまで行ったらしい。 あとは改装中のバイト先に行って、ハルカさんとかに挨拶して、 そういう情報があっちこっちから、メールで届いてそのたびに笑った。 部活が終わって帰るとき、比呂の家に行ったらおばちゃんがいて 『あら、ユッキーくん。あの子の入院中は、毎日きてくれてありがとう。』ってお礼言われた。 『いえ。あの・・比呂は?』と俺が聞くと、おばちゃんがにこっと笑って 『彼女のところに行ったみたい。』といった。 は? 『皆さんのところから帰って来てね、家でお昼を食べてたら、誰かからメールが来てね、 すぐにあの子、かけなおして。 《泣くなよ》《大丈夫だよ》とか言ってたんだけど そのうち《お前、ちゃんと家にいろよ。今から行くから。》っていって、でかけたの。 《夕飯いらない》って言ってたから、遅いと思うわ。帰り。』 ・・・・おいおいおいおいおい・・・・・。 俺は、抜け殻のような顔で『ああ、そうですか。それじゃ、さよなら。』 と、おばちゃんに頭下げて、家まで帰って部屋に閉じこもった。 比呂の携帯に電話したんだけど、電源切ってある・・。それって・・・。 比呂の寝顔とか、点滴の痕とか、寝起きのかすれ声とか そういうのが一気に浮かんできて ・・そういうのを・・独り占めにしてる女がすげえ憎いというか・・ 女って言うだけで・・そんな・・・あいつとヤれるってのが、悔しい。 俺。比呂の入院中、あいつの鎖骨見て、それだけで勃ってたりしたんだ。 いつも見たことのない格好の、あいつを見てたら、すげえなんかそんなで。 寝ぼけた顔とか、寝癖ついた髪とか、長いまつげとか 涙とか・・・・・ なんかもう・・やんなっちゃったよ・・・。 どんなに好きで好きでたまらなくても・・ 比呂は全然気がついてくれないしさ・・・ 裸で抱き合うなんてありえないし・・・・ なのに触りたいし、独占したいし、あいつの意思で俺を必要としてほしいし・・ ベッドの上で枕ぶん投げた。そしたらそれと同時に携帯が鳴る。 俺は、出る気ゼロだったけど、小沢かもしんないから、そっこうで電話にでた。 『もしもーし。』 『あー、ピンク?俺。黒。』 ?!!!『比呂っ?なに?俺!!え?』 『ごめん、今、家に電話したらさ、お前がきてくれたって聞いてさ。』 『・・・・ああ・・。いや・・お前・・今どこ?』 『今?・・今は・・』 バカか俺!そんなこと聞くなよ! わざわざ傷に塩塗りこむようなことすんなって! 俺は耳から携帯を離したが、比呂の答えが少しだけ聞こえてしまった。 『・・ぐちんち。』 『・・・・は?』 『坂口んち。』 『・・・・えーーー?!』 坂口が、比呂から借りた漫画読んでて、そしたら比呂を思い出して、 悲しくって泣いちゃったんだって。 泣き出したらとまらなくって、んで、比呂にヘルプコール入れたらしい。 俺等以外は見舞い禁止で、クラスのやつらはほんと心配したんだと思う。 だから比呂は坂口のとこにいって、今まで色々話をしていたんだそうだ。 なんだよ・・・なんだよー・・・。 『今から坂口と飯くうんだけど、お前んち近所のラーメンや行くんだ。これる?』 俺は、間髪いれずに『いくともよ!』といい、着替えてしたくして家を飛び出した。 ラーメン屋の前で、比呂が手を振っていて、坂口も笑って俺を見ていた。 くそう。こんなテンぱー男に、誤解嫉妬していたというのか!! 比呂の入院中はナースが気がかりで、退院したら何もかもが疑わしい。 『入ろう。』といわれて、俺は比呂に背中を押されてどきっとした。 恋愛反射。単純な俺。 Post at 23:15 |