比呂と語った
今日、部活があって、比呂と麦が仲直りした。
まあまだギクシャクしてるけど、前みたく二人で並んで歩いてる。
俺はいつも麦に対してヤキモチばかりやいていたけど、 麦とけんかした途端、
比呂が全然笑わなくなっちゃったから、仲直りしてくれてよかったと思う。
俺は今日塾があって、比呂は20時までバイトだったんだけど
会いたいなあって思って、電話したらもう比呂は家に帰ったあとで、
『どしたの?』っていわれたから、『ちょっと話があって・・。』とごまかした。
そしたら比呂が、受話器の向こうで、んん〜っと伸びをしたような声を出し
『いいよー。きくよ。』といってくれたんだ。
『寝てた?』
『寝てない。でも、ねっころがってる。』
『だるいの?』
『ううん。だるかないよ。』
受話器の向こうでがさがさと音がする。枕か布団がすれたような音。
ベッドの上に寝転んでるんだな。いいな。隣に寝たいなあ。
『あのさ・・。』
『んー?』
『よかったね。麦と仲直りできて。』
『ああ・・。うん。んふふ。』
わあ・・。照れ笑いかよ、コンチキショー。
『そういやさ、比呂さあ麦に蹴りいれられたじゃん。大丈夫?』
『蹴り?・・ああ、腹?』
『うん。アザひどかったじゃん。』
『大丈夫だよ。別に普通に飯食えるし。』
『そっか・・・よかったね。』
受話器の向こうで、小さな声で『なんでアザのこと知ってんだ?』とつぶやかれたので
あわてて話題を変えることにした。(勝手に腹を見たなんていえない)
『そそそういえば比呂!』
『はははっ。何?』
『バンプっていんじゃん。ばんぷ。』
『ああ。』
『そうそう。俺ね、最近はまっててさ、CD買おうと思うんだけど、比呂はバンプのなんて曲が好き?』
『バンプー・・?えー・・、わりとどれもいい曲だよ。』
『でもさ、特に比呂が好きなのって何?』
『んー・・。ぱっと浮かぶのは・・タイトルオブマイン・・・とー メロディーフラッグかなあ・・。』
『へえ〜・・・。』
『麦が詳しいよ。あいつは、藤原君で一日が始まり、藤原君で一日が終わるから。』
『藤原って?』
『ボーカルの人。もとおくん。』
『ああ、そういえば大好きなんだよね。』
『そう。DVDもCDも全部二枚ずつ買ってるくらいだからね。今度借りたら?喜んで貸してくれるよ。多分。』
『うん。きいてみる。んでさ・・。』
『ん?』
『俺さ、エルレも最近よく聴くんだけどさ、比呂ってどの曲が好きなんだっけ。』
『俺はあれだよ。細美君自体が好きだから。曲も全部好き。特に英語のやつ。』
『えー!!歌詞の意味わかるの?』
『わかんねーけど・・。でも好き。・・45とか・・Pizza Manとか・・ スーパーノヴァとかー・・つか、言い切れないし!』
音楽の話しだしたら、すっごい嬉しそうに話し出す比呂。 そんな比呂の声が聞けて嬉しい。
『ねえねえ、そういえばさ、比呂ってさ、ナンバーガールやアートスクールすきだっていってたよね。』
『うん。よく聴くよ。』
『CDかして欲しいんだけど・・・。』
『いいよ。でも俺あれだ・・。』
『ん?』
『ナンバガとアートは、ライブCDしかもってないや。』
『まじで?!』
『でも、アートのほうはDVDもついてるからお得。今度貸してあげるよ。』
『うん。前にお前にCD借りた時さ、もってくるの忘れて聞きそびれちゃったんだよね。だから。』
『うん。いいよ。今度おいでよ。』
『うん、ありがとう。』
お互いふふっと笑う。やっべ。最高!!!
『ねえねえ。』
比呂が話かけてくれる。
『なに?』
『あのさ、・・さよなら絶望先生、前に貸したあと何冊かでたんだけど読む?』
『うっそ!読みたい読みたい!あ、ごめん。そういや俺、蟲師借りっぱなしだ。』
『いいよそんなのいつでも。』
『今度、もっていくね。』
『はいよー。』
グダグダしながら話を続ける。俺は幸せいっぱいな気分で。 比呂はきっと、眠い目擦りながら。
そしたら比呂が『ねえ、ちょっと一旦切るよ?』という。
俺は、えっ?・・っておもったけど、『うん、わかった。』と答えて電話を切った。
そしたらすぐに、比呂から電話がかかってくる。
『あれ?比呂?』
『うん。俺ー。ごめんごめん。携帯の充電が切れそうだったから。』
『あっは。そっかー。』
『うん。そうそう。』
・・うそばっか。きっと俺が話を長くしそうだから、 比呂から電話かけなおしてくれたんだ。
俺んちは携帯代金、親が払ってるし・・だから気を使ってくれたんだ・・。
・・・・ありがとね。
『ねえ比呂比呂。』
『んーー?』
たるそうな返事。すげえ好きだ。
『俺さ、こないだ塾のテストで、1位取れたよ。』
『うそ!まじで?あの塾ってレベル高いんじゃねえの?すごいね。』
『ふふ。頑張っちゃったんですよ。』
『頑張れる君がすばらしいって話ですよ。』
『塾の強化授業受けてた間さ、お前にバイト代わってもらってたじゃん。ありがとう。』
『は?なんだよ、そんなの、礼なんか言うなよー。』
あはは照れてら。
『残りの休みは、バイトに集中するよー。』
『お前宿題終わったの?』
『うん。・・あれ?比呂、まだおわんねーの?』
『・・・読書感想文あたりのエリアがね・・まだね・・。』
『本は読んだの?本は?!』
『感想文の本ってさ、なんでもいいの?あれって。』
『いいんじゃねえの?エロ本以外だったら。』
『あああ!!エロ本でもよかったらよかったのに。』
『わけわかんね。』
『どうしようかな。俺んちさ、中学時代に感想文とか書く習性がなかったんだよ』
『習性じゃなくて習慣?』
『本がさあ・・・小学校の時にかってもらったカイケツゾロリか、ずっこけ三人組しかねえ・・。』
『なっ?!!』
『あ、ぐりとぐらもある。』
『いやそれはまずいだろう。』
『そうか。まずいか。いやわかってたけど、いってみただけ。 』
『いってみただけ・・・。』
『お前何読んで、感想文書いた?』
『俺?俺は、国家の品格。』
『・・・・ああ・・あれね。』
『(確実にお前の知らない本だけどね)』
『俺何でかこうかな・・。』
『うーん・・。なにがいいかな。』
『劇団ひとりの本でかこうかな。』
『陰日なたに咲く?』
『うん。前に目覚ましでみたらおもしろそうだったし。』
『いいんじゃね?でも今から読んで間に合う?』
『あー・・そうか。そっちの心配があったか。』
『悩み尽きないね。』
『まったくだよね。』
くっだらねえなあ・・、何この会話。 すげえ理想的な会話だよ・・・。
『ねえ、比呂。』
『んー・・?』
『かおりとどうなった?』
『かおりさん?もうなんもないよ。』
『・・・ふっきれた?』
『ふっきれないよ。男ってだいたいそうじゃん・・。』
『・・・・。』
『でもさあ・・、ほら、そういうのは時間たたないとなんともね。』
『うん・・。』
『ユッキーのほうは?なんとかなったの?』
『え?』
『かなわぬ恋の行方はどうなった?』
・・ああ・・。 前に比呂に、自分の片想いの件を、何気にしゃべったことがあったんだ。
鈍感な比呂は当然俺の片想いの相手が、自分なんて気づいてない。
『ダメだー。全然。ちっともダメ、暖簾に腕押し。』
『なんだよー、大丈夫?』
『わかんね。』
『つか、俺とくっちゃべってる暇あったらさ、その人に電話のひとつでもしたら?』
俺は笑う。なにいってんだよ・・。こんにょひろめ。
でもさ、このまま比呂の声聞いてたら、家飛び出して会いにいっちゃいそう、俺。
だからもう切らなきゃ。楽しい電話のまま終了しよう。
『まあまあ、いいじゃん。俺の恋はどうでも。』
『えー。』
『疲れてるとこ悪かったねー。話できて嬉しかった。』
『ははっ。』
受話器の向こうで比呂が笑って、そしてむせて、ゲホゲホ咳をしている。
『風邪?』
『ちがう。寝ながら葡萄食ってたらむせた。』
『寝ながら物を食うなよ。』
『わかった。ごめん。』
そのあと二言三言、くだらない話をして電話を切った。
まあ・・薄い内容の話であったが、俺は幸せ満喫できた。
麦と比呂が喧嘩してたから、昨日の夜なんかハラハラしてたんだ。
ほっとしたしー・・いっぱい喋れたしー・・ 今日は一日、いいことばっかだったな。
明日もこの調子で頼むよ神様。 夢に比呂が出てきたら、更に最高!
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