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・・比呂が、俺と付き合ってくれるって。
聞きまちがえかもしれないけど『大切にするからね。』って・・。

・・帰り、自転車を押して歩きながら話したんだけど・・
俺、嬉しいのと、感動とで、あまり話ができなくなっちゃって・・
そしたら比呂が、そばにあった本屋の駐輪場に自分の自転車停めて、
俺の自転車にまたがると、俺をケツにのせて、家まで送ってくれたんだ・・。

家までまだ距離あったし、俺を送ったら比呂、 本屋まで戻らないといけないのに・・・
でも、俺なんかマジ感動しすぎて、口ひらくと涙でそうだったから
なんとか必死に『ありがと。ごめん。』って比呂に言ったら、
比呂は、ふふって笑ってさ・・『ちゃんとつかまりな。』って・・。
そんだけなの・・。恩着せがましいこと、なんもいわないの。あいつ。


信号待ちの時、比呂の腰にまわしてた俺の手を、ぽんぽんって比呂が優しく叩いて、
何か言われるのかと思ったけど、あいつは何も言わなくて。顔を上げて比呂を見たら、
比呂は遠くの方を眺めてて、ぼんやりしながら俺の手をぽんぽんしてて、
で、信号が青に変わったとき、一瞬ぎゅっと俺の手を握って ぱっと離し、
自転車を漕ぎ出したんだ。 俺が比呂のことを見てるのに、何にも気がつかないでね・・。


俺ん家に着いたら、比呂はちゃんと俺を玄関まで送ってくれた。
別れ際、俺は比呂に、勇気を出して『俺でいいの?』って聞いたんだ。
そしたら比呂は、ちょっとだけにこっとして、うん・・って頷いてくれたよ。

俺さ・・今まで何度もさ・・俺って駄目だなあとかさ・・
つまんない奴だし、人と話してるとキョドっちゃうしさ・・
人見知り通り越して、愛想ゼロになっちゃうし・・
ほんとにそんなだったんだけど・・・

比呂はいつも俺を認めてくれてた気がすんの。
もちろん小沢や浅井や麦も、出来損ないの俺のことを
いつも仲間にいれてくれてたけどさ・・・

でもさ・・・やっぱね、どこか比呂は別だったんだよ。
好きになったきっかけは、もうどれがそうだったのか忘れちゃったけど、
やっぱ別格だったんだ・・・。もう、理由なんかどうでもいいくらい。

信じられない・・ずっと大好きだった比呂と、俺が付き合えるなんて信じられないんだけど・・・
でも・・でもなんか・・・事実であってほしいと思うし・・・
信号待ちのとき見たあの表情や、優しく笑ってくれる顔を、知ってしまった俺にはもう、比呂無しの人生なんか無理だ。

もう無理だ・・どうしていいかわかんないくらい大好きで・・ 幸せだ・・・苦しいけどすげえ幸せだ・・。

昨日の俺は今日の俺のことを、心の底から絶望視していて哀れんでいたけど・・
日付が変わって今日の俺は、体に収まりきらないほどの幸せで呼吸もままならないよ。

明日の俺も、比呂の恋人であれたらいいな・・。
1年後の俺も10年後の俺も、比呂のそばにいられたらいいなと思う。


幸せだ。





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