ありがと。

俺・・なーんでこんなに駄目なんだろう。
比呂が女と話してるのを見ただけで、すげえショック受けてしまった。


今日は光が丘の先生らが、みんなで研修らしくって、
学校半日だったから、午後早くからバイトに行った。

常連のOLさんが来て、旅行の帰りだったみたくて 菓子とか買ってきてくれたから、
みんなでお礼を言ったんだけど、 その人が比呂狙いなのは、前からわかっていたから
モノで比呂を釣られるのがいやだったし 、比呂は俺と付き合ってるのに、
そんな俺の前で、あんな女とニコニコ話しちゃってさっ・・

いっそみんなの前で、比呂と俺は付き合ってるって暴露しようかと思った。
比呂にこれ以上悪い虫がつかないように・・ でもそんな勇気がなくて

休憩まで我慢できなくて、俺は店裏のスタッフルームに、かけこんでびーびー泣いてしまったんだ。
だって悔しい。俺、やっと比呂と付き合えるようになったのに、小沢以外の誰にも自慢できない。

そしたら比呂が俺の様子を見に来てくれて、声をかけてくれたんだけど、俺は返事もできなくて・・
そしたら比呂は俺の目の前に、ため息つきながらしゃがみこんで 、その女の人が買ってきた土産の菓子を
二つ渡してきたんだよ。

『いらないよっ・そんなの・・』 泣きながら俺は比呂に言う。比呂はそんな俺を見ながら、すっごい優しい顔で
『ユッキー甘いもの好きじゃん。俺のもたべなよ。』 っていうんだよ。なんだそれ・・・。

『俺、甘いの無理・・だから連帯責任で俺の分も食え。』
『なっ・・なんでっ!!なーんで連帯・・。』
・・・連帯責任って・・なんだよー・・・もー・・・。

比呂はその後、黙って俺の太ももに頭をちょこんとのせた。
そのままなんもいわないで、ぼんやりとした顔をしてるから、自然と俺の手は、比呂の髪を撫でた。
ゆっくりと髪を撫でていたら、比呂が黙って目を閉じる。胸の奥が、ぎゅうっとする。

『ごめん・・・なんか・・やきもちやいた・・・。 』

比呂の髪を撫でながら、俺は小声で謝って、比呂の顔を覗き込んだら
比呂がだまって、うんうんって・・頷いてくれてさ・・・。
で、撫でてた俺の手を比呂が掴んで、自分の口元に寄せた。そして、ふふって笑う。

『俺さ・・。』
『何?』
『お前昨日怪我してたじゃん。』
『ああ・・あざ?』
『あれ本気でむかついて、空手部の三年のとこ行ってきたんだ。』
『え?!』
『「幸村やったの誰だー!てめえ決闘だーー!」とか勇ましく・・・。』
『・・ふふ。』
『そしたらその人、顔とかアザあって、お前よかよっぽどひどい怪我しててさ・・。』
『・・・・。』
『決闘申し込みに行きながら、最後は謝って戻ってきました。』
『あはははっ。』

俺の手のひらに顔をうずめながら、比呂がくすくすと笑っている。
『勘弁しろよー、びっくりしたよ。空手部シメるとかありえねえから。』

俺は比呂に握られている手とは違う方で
比呂の前髪を横に流した。目元が髪で隠れてたんだ。
髪をどかしたら、比呂が俺を見て笑った。

『人が来るよ。』 俺が言うと
『こないよ。』 比呂が言う。
『なんで?』 俺が尋ねると
『大事な話があるから、こないでって、秋山さんちに言ってきたから』

・・・

『大事な話?』
『うん。』
『なに?』
『・・・。』
『なーにー・・。』
『や、・・。』
『・・・。』
『今度の休み、どこかいこうよ。』

・・・・

『え?!それってデート?!』
『でかい声で言うなよ。』
『わっ・・わあ・・ほんと?』
『ほんと。』
『わー・・うれしい。』
俺が喜ぶと、比呂が立ち上がって俺の頭を撫でた。

『じゃ、俺店に戻る。』比呂が言うから、俺は慌てて比呂に尋ねる。

『で、大事な話って何?』
『だから、その話だよ。 』
『え・・・。』

すると比呂が俺の方をみながら、むっとしたような顔して、
『それをお前に言うまでに、すげえ勇気がいったの、俺は!』
といって、部屋を出て行ってしまった。

・・・・・

わ・・・・・


俺マジ幸せすぎて死にそう
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