2006/5/8 (Mon.) 21:55:13
『昨日電話で予告した菓子持ってきたぞ。たんとおあがり。』
おはようとかの言葉の前に、俺は比呂にそういった。
昨夜電話で話をしたとき、こんにょが元気なかったから
風邪で休んだらヤダなと思って、昇降口で待ち伏せしてたんだ
俺の顔を見て笑ってくれた比呂はなんか片目が一重だった。
こないだ、俺んちでめちゃ泣いたとき、こいつの片目、一重になったんだよな・・。
昨夜沢山泣いたのかな・・。なんか・・なんかあったのかな。
比呂は『一個もらうね。』といって、菓子を手にとってふふっと笑った。
そして、その菓子をぼーっと見つめながら、『昨日はごめん。』と謝られた。
・・やっぱなんか変だ。
『どうしたの?』俺は聞く。昨日も聞いたが今日も聞く。
比呂は少しだけ笑って、『寝不足。そんなに俺、変?』といった。
『変だよ。何かあったの?』『別になんもないよ。』
『ほんとに?』『え?・・・なんで?』
そんなラリーをしていたら土産貢ぎ現場を、斉藤と麦に発見されてしまった。
『あーうまそー。俺もちょうだい!』だって。
包装見ただけで味がわかるのか。
朝のHRまで時間があったから、屋上に行って食うことにした。
みんなでうまいねとか言ってるとき、比呂の目が遠くの町を追っていた。
佐伯と斉藤が意外なほどの甘党ぶりを発揮して、土産の菓子はあっという間になくなった。
比呂に全部あげるつもりだったけど結局ひとつしか食べてなかった。
階段を下りて教室に行くとき、佐伯が比呂の髪をぐしゃりと撫で、
『大丈夫か?なにあったかしんねーけど。言えよ。何でも。な?』
と声をかけた。比呂は佐伯の腹にエルボーして、
『・・わり。ありがと。』と短く返答。『なんでもない』とは言っていなかった。
・・・やられた。先を越された・・。
言おうかいわまいか迷ってるうちに、佐伯に先を越されちゃった。
友達らしいことを言いたくても、俺はどこかでそれをためらう。
なんでだろう。わからない。でも今回ばかりは、ほんと・・なんか・・。
教室に入って10分もしたら、比呂はいつもどおりやんちゃな比呂に戻る。
でも時々、窓の外に目をやるあの感じが、いつもとまるで違っていたんだ。
俺にはわかる。わかるに決まってるさ。
だっていつだって、比呂のことが大スキで、比呂の事だけをみてるからね。