2006/5/29 (Mon.) 15:30:17

一昨日の夜、派手に喧嘩した俺たち。
100%俺が悪かったんだけど、謝るタイミングを見つけられず・・

結局バイトあがりの比呂に、声をかけてもらってきっかけみつけて
コンビニで弁当を買ったあと、公園で食うことに決めたんだけど、
俺に殴られて怪我してる紺野。なんて言って謝ればいいんだ?

****

『あの屋根のとこで食べよ。』『うん。』
公園の中央にある屋根のついた休憩所に俺らは向かった。
最近改装したばかりだから、すげえ綺麗でなかなか快適。

『なんか今日疲れた・・。』比呂が珍しくそんなこと言ってベンチに座る。
一日倉庫だったんだもんな・・・俺のせいで・・・。

またも俺は無言になってしまう。でも紺野が話を始めてくれた。

『今日、バイトどうだった?』

『バイトは・・それなりに忙しかったよ。』そういって俺は弁当の蓋を開ける。
『スパゲッティじゃないんだね。めずらしい。』って紺野に言われた。
パスタな気分じゃなかったんだ。俺は白身魚フライをぱくついた。

沈黙。俺が黙るから会話が途切れる。そしたら紺野が俺に言った。
『はい。えび。』
エビフライがメインの弁当なのに、比呂は俺にそれをよこしてくる。
『え・・いいの?』と俺が言うと、『うん。いい。』って俺の弁当にのせてくれた。

『・・怒ってないの?』俺は言う。『怒ってるよ。』と比呂が言う。
『怒ってるのに、えびくれんの?』とおれがいうと『そこまでおとなげなくないよ。』と比呂が笑った。

比呂が笑ってくれた。すげえほっとした。でもすぐにまた比呂はむすっとしてしまう。
けど、さっきの笑顔を見て少し、俺も張り詰めた気持ちがほぐれたよ。
勇気だせよな、俺。心で何度も言い聞かせて、俺は話し始めた。

『・・痛い?・・顔。』
『痛い。すごく痛い。俺は枕に顔うずめないと寝れないのに・・・。』
『じゃあ寝てないの?』
『‥それが意外と大丈夫だった。』
『・・・。』
『お前こそ寝てないんじゃないの?顔色悪いよ。』
『・・・・。』
『つかおまえさ、すごいよね。殴り方が素人じゃなかったけど、なんかやってたの?』
『・・・。』
『・・・・まあ・・・いいけど。』

比呂があんま寝れなかったって聞いて俺はまた黙ってしまう。
話を展開しようとしてくれるのに・・比呂の気持ちを台無しにしてしまってる。
それでも比呂はめげない。こんな俺に根気よく話かけてくれた。

『そういや小沢が心配してたよ。お前が寝込んでると思って、電話もメールもしないでいるみたいだよ。』
『小沢が?』
『うん。俺にお前の様子きいてきた。』

比呂がジュースを飲んで俺を見る。

『大丈夫?お前、最近おかしくない?・・・もともとちょっと変わってるけど・・。』
これは笑うとこなんだろうと思って、俺は無理やりハハハとわらった。

『や、笑い事じゃなくて。』比呂に言われて俺は黙る。

『バイトきついならさ、やめてもいいと思うよ。イジメのことを気にしてるんなら、
文句言いに行こうぜ。前にも言ったけど俺も一緒に行くし。』
『・・・。』
『俺は幸村と遊んで楽しいし・・だから遊べるときは誘って?
俺はほら、生活パターンがきまってんじゃん。学校とバイトくらいしかないし。
誘いやすいから友達や女が、連絡よこしてくるんだよ。』
『・・・・。』

比呂にもらったえびを見てたら、涙がぽろぽろと出てきた。
比呂は怒っていたはずなのに、俺がこんなだから結局俺を慰め始めてくれてる。

『幸村はさー・・、クラスも部活もバイトも一緒じゃん。だからさ、声かけやすいだろ?な?
遊びたいって思ってくれてるなら、誘って。まじで。そのほうが嬉しいし。』
『・・・・。』
『なんかさ、俺ばっかお前を遊びに連れまわしてるみたいで、俺は俺で気にしてた。
バイトも同じとこにいれちゃったし・・無理させちゃったかなって思ってて。』
『・・・ううん・・。むりじゃないし・・うれしい。』

比呂は、俺を見た。そして小さな声で『泣くなよ〜・・。』という。
頭を撫でてくれて、弁当のおかずほとんどくれて、一生懸命慰めてくれた。

・・俺・・いい思いをしただけだった・・・。

******

家に帰って風呂に入る。頭を洗ったらまた涙が出た。
俺は比呂に許してもらえたけど、結局望みは満たされはしない。

比呂は俺との仲を、一生懸命つなげておこうとしてくれる。
でも、それはあくまで友達だからで・・恋とか愛のそれとは違う。
男同士の恋愛なんていうものとは、無縁の世界にいる比呂に
愛してほしいなんて望む方がどうにかしているんだと思った。

『つきあおうよ。』といわれたい。
『愛しているよ。』といわれたい。

それか、俺がいつか告白したときに、ちゃんとその言葉を聞いてもらいたい。
だけどやっぱりそれは無理な話だ。

俺の嫉妬心とか、比呂への執着心は、
全部過去に俺がイジメにあっていたせいだと比呂は思ってる。

『俺は比呂が大好きだよ。』と今まで何度もあいつに言ったけど
『ふーん・・ありがとう。』って、比呂がそっけなく言って、それで終わる。

そこに宝石が埋まっていることを知らない人間に、宝物を見つけられないのと同じかんじで
男友達同士の恋愛を知らない比呂が、俺の恋心に気づけるはずがないということだ。

でもオカマオーナーの痴話げんかにいつも巻き込まれてる比呂だから
男同士でも恋人になることがあるってのはわかってるはず。

同性恋愛を知ってる比呂が、俺の気持ちに気がつかないのは、俺が比呂の親友だからか?

友情が障害になっているのか?・・・・・・・あんなにほしかった友情が?
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