Date 2006 ・ 08 ・ 25 ごはん 昨日は麦の試合の応援に行った。浅井と小沢と、紺野と俺で。 麦はスタメン入りしてたけど、なかなかボール触らせてもらえなくて それを見て紺野が激怒していた。短気だなあ。もう。 光が丘はバスケが盛んで、一年から選抜に入れるってすごいことなんだよね。 特に高校とかになると、それこそ全国から人集まるし。 そんな中では、さすがに麦も、そう簡単には点入れられないよ。 でも比呂は、麦をひいきしてるから、、相手が悪いとか、周りが悪いとか言って、ぷんぷん怒ってた。 まあ、喧嘩ふっかけたりはしなかったけど、ちょっと機嫌悪かったかな。 試合あと、選抜の人らはそのままバスで、合宿先に行っちゃったから 俺等は麦と話すこともできず、四人で飯を食いに行った。 せっかく都会(体育館そばはわりと開けてて、市内のなかでもちょっと都会ランク)にきたので いつもじゃ行かないようなとこに行こうってことになり 最近出来たカフェとファミレスを合体させたような店に入る。 そしたら女子高生がいっぱいで、でも紺野は麦の件で機嫌悪いから、 そんなんには全然ときめいていないようだった。機嫌悪い時の紺野は、モテオーラ半減だ。 俺等は普段から友達だから、紺野の不機嫌には免疫あるけど、 免疫のない人から見ると、本気で紺野は怖いらしい。 普段は、余計なこと言わなくて、おもしろくて、笑顔もキュートなんだけど 確かに怒ったときの比呂は、人を殺しそうないきおいあるもんな。 おっかないよー。もー。 と言うわけで、そんな店に入り、メニュー見たんだけど、 すばらしいタイミングで、から揚げフェスタとかやってんじゃん。 ありがとう!都会のカフェファミレス!これで紺野の機嫌も直るかなって思って紺野の顔見たら全然笑わない。 なんか、怒り通り越して泣きたくなったらしく、 隣に座ってた浅井に頭撫でられながら、涙目になってた。 ・・・そんなさ・・麦なんかのことでさ・・一生懸命になんないでよ・・・・。 そしたら比呂の携帯が鳴った。 おもいっきりカツンのリアル何とかって曲だったからびびる。 (こないだまでエルレだったじゃん・・・) 電話にでたら、顔つきが変わって、比呂はメニュー適当に指差すと 『ちょっと電話してくる。』 っていって、店の外にでていってしまった。 店員さんがその後すぐ来て、俺等はそれぞれのメニューと 比呂に託されたメニューを伝え、少しだけ話をした。 『紺野ちゃんってさ、なんかあれだよね。』 『?』 『読めない。』 『読めない?』 『考えてることとか、そういうの、読めなくね?』 『ああ・・。そうだね。』 『いい子だけどさ。』 『うん。』 ・・・やっぱみんなも、そう思ってんだ・・・。 決していい印象じゃないのかな・・。地味気分・・。 でも今度は小沢が言うんだ。 『確かにさ、読めないとこあるけどさ、紺野がいると安心するよね。』 『ああ、そうだね。』 ・・・安心?俺は黙って浅井と小沢の会話を聞く。 『あいつは不安定だけど、でもさ、友達も悪口いわないじゃん。 愚痴もいわねえしさ・・俺、あいつが自分側の人間の陰口いってるとこ、見たことないよ』 『あ、おれも。』 『色々助けてもらってるし。フォローうまいしさ。あいつ。』 『ああ・・そうだよね。』 『まあ、今日はあんなだけどもさ。』 『・・・そうだねー・・。でもさ、たしかにそうだよね。 うれしいよね。紺野ちゃんが自分のために怒ってくれてるの嬉しいもん』 『ただ、その怒りから、相手と喧嘩とか、まじこまるけど。』 『うん。こまる。』 ははは・・って二人が笑ってる。 俺は外を見た。紺野が空を見ながら、電話でしきりに頷いている。 相手の話を、だまってきいてるみたい。 紺野が席に戻るまで5分ほど。 丁度料理がきたころに、店にはいってきて席に着いた。 『あー・・うまそう。』 そういう比呂の顔。なんか泣いたのかなって感じ。 『誰から電話?』 浅井が言うと、比呂はみじかく 『麦』 といった。 『なんだって?麦。』 小沢がフォークで肉をつつきながら、比呂に聞く。 すると比呂は、浅井の皿に付け合せのにんじんをおいて じ・・・っとコップの水を見て、ぼろぼろぼろーーーと泣いたんだ。 隣のテーブル席の女子高生が、横目で比呂をみている。 『明日、スタメン入れるか微妙みたいでさ・・それいいながら、あいつが泣くんだ。』 ・・・そんな・・。 『俺ほんとダメだ。そういうときに、なんも言葉が浮かばないもん。』 『・・紺野ちゃん・・。』 『役立たず・・もーやだ俺。』 目の前のから揚げに手もつけないで比呂が、露骨に落ち込んでいる。 そうなんだよ・・。 こいつのさ、こういうのが読めないんだよ。 普通さ、みんなの頭に立つようなやつってさ、 弱み見せないで意地張って引っ張ってくやつが多いじゃん。 笑顔でさ、『俺に任せとけ』ってさ。そういう奴多いじゃん。 でも比呂は、もうめちゃくちゃなんだ。 強がりも人一倍、負けず嫌いも人一倍、わがままも人一倍・・弱音も優しさも、全部人一倍。 ただね、ただ、俺らが手を焼いて、逃げ出したくなるようなわがままは言わないんだ。 最後はちゃんと自分でたちなおる。 友達として自分はなんて、非力なんだろうって思う。 俺は比呂に引っ張りあげてもらってばっかなのにねえ・・。 比呂が露骨に落ち込んだら、みんなもなんか、おちこんじゃって、 誰も喋んなくなったら、比呂がふーっといきをはいて、 『ごめん。もう大丈夫。』 といって、付け合せのにんじんの残りを、俺の皿と、小沢の皿に乗っけて 『これ、お詫び。』という。 『お詫びがきいてあきれるわ!にんじん嫌いだからよこしてきたんだろーが!』 浅井が突っ込んで、比呂がわらって、そんでやっと、いつもの俺らペースに戻った。 ・・・俺等はそのあと飯食いながら、明日も麦の応援に行こうということで、一致団結した。 比呂が笑ってくれたから、飯は最高にうまかった。 レジを済ませて店を出て、そしたら比呂は電話をかける。 『ちょい・・きみら・・きて。』といって。 比呂の携帯をのぞくと、なんとテレビ電話になってた。 そういやこいつも麦も、最近携帯変えたばっかで テレビ電話対応だったんだ。麦の落ち込んだ顔が見える。 『明日も応援くるからな。』比呂が言う。 『がんばりなよ!麦!』浅井が言う。 『俺もぜったいくるから』小沢が言う。 『もし頑張ったら、お前のブロッコリー、一年間全部くってやるから。』俺が言う。 俺の一言で麦が笑ってくれて、すごいうれしかった。 麦は、ピースしてくれて 『まっすぐかえりなよ。さんきゅ。』といった。 電話を切ったら、なんか興奮してそのままみんなでカラオケに行った。 麦のかわりにバンプの曲を、四人で合唱でうたった。 途中で一回トイレにいって、部屋に戻るとき俺はおもったんだ。 数ある部屋の中でも俺は、比呂たちのいる部屋にもどる。 そこにもどれるってことが、すげえしあわせだなあって。 Post at 08:53 |